どこまでも奥行きを描ける「アイソメトリック図法」その特徴と広がる用途を考える

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アイソメトリックとは

アイソメトリック(等角図)は、3Dの物体を2Dの平面に正確に描くための技法です。この技法を使うと、X軸、Y軸、Z軸をすべて均等な角度で描けるため、物体をバランスよく表現でき、どの角度から見ても歪みが生じません。設計図やゲームデザイン、地図のような視覚的に全体を把握する必要があるビジュアル制作など、さまざまな場面で幅広く活用されています。

特徴 1遠くにあっても小さくならない

奥のオブジェクトも比率が同じになる

アイソメトリック図法の大きな特徴は、遠くにある物体も手前の物体と同じサイズで描けることです。通常の1点透視や2点透視の絵では、遠くにあるものは小さく描かれますが、アイソメトリックではそのような遠近感がありません。これにより、物体の組み立て方や関係性をわかりやすく説明する際にとても便利です。

特徴 23つの面を1つの画面で見せる

色々な名称

アイソメトリック図法では、X軸、Y軸、Z軸がすべて120度で交わります。そのため、すべての面が等しく描かれ、歪みがなく、バランスの取れた表現が可能です。この特性を活かし、設計や説明図など、複雑な構造をシンプルに表現することができます。

アイソメトリック図法に似たような、一つの図形で立体をわかりやすく図示する方法(軸測投影/斜投影)は、いくつかの図法が存在します。それぞれの図法は、視覚的な表現や用途によって使い分けられます。

  • アイソメトリック図法
    この図法では、X軸、Y軸、Z軸がすべて120度で交わり、どの方向から見ても物体の大きさや形が変わらない特徴があります。つまり、視覚的に歪みがなく、安定した3Dの見え方が得られます。複雑な構造を簡単に理解できるように描けるのが強みです。
  • ダイメトリック図法
    2つの軸は同じ比率で描かれ、もう1つの軸は異なる比率で表現されます。このため、全体的なバランスは保ちながら、一部の面に奥行き感を加えて、立体感を強調できる手法です。安定感と強調のバランスが取れているのがポイントです。
  • トリメトリック図法
    3つの軸すべてが異なる比率で描かれるため、独特な奥行き感や強調が可能です。この図法では、見る角度によって違う面が目立つため、より複雑で印象的な見え方を作り出すことができます。
  • キャビネット図法
    物体の前面を正面から見た状態で描き、奥行きだけを45度に傾けて縮尺を半分にします。こうすることで、直感的に見やすく、すっきりとした立体感を表現できます。奥行き感を抑えつつも、全体の形をわかりやすく見せるのが特徴で、上記の3つより簡単に描くことができるため、立体の説明に便利です。
  • カバリエ図法
    1つの軸を45度に傾け、縮尺を変えずに奥行きを強調します。この手法では、物体の奥行き感が際立つ形でデフォルメされますが、数値としては縮尺を読み取りやすい図法です。

特徴 3テキストも自然に配置できる

自然なテキスト配置

アイソメトリック図法は、物体の面に沿ってテキストを配置できるため、文字とビジュアルを自然に組み合わせることができます。例えば、建物の壁や床に沿って文字を配置することで、全体のデザインを損なうことなく情報を伝えることができます。ただし、斜めの文字は読みづらくなることもあるため、小さな文字や装飾的なフォントの使用には注意が必要です。

資料角度別の目線の高さ

アイソメの角度

角度を140度、120度、100度で作成したサンプルを比較すると、視点の高さが大きく変わることが分かります。人の仕草や高さのあるものを強調したいときは、視点を低く設定すると扱いやすいです。逆に、広いエリアや全体像を見せたい場合は、視点を高くすることで、空間の広がりをわかりやすく伝えることができます。

アイソメトリックの活用

アイソメの用途
アイソメの用途2

用途 1ルート説明に

複雑な施設内のルートを示す際、アイソメトリック図法は非常に効果的です。各フロアの高さや階層の関係を視覚的に自然に表現でき、全体の経路が一目で理解しやすくなります。これにより、視覚的な混乱を避け、正確な案内をすることが可能です。

用途 2組み立て説明に

部品同士の角度や接続方法を正確に伝えたいとき、アイソメトリック図は非常に便利です。すべての面が均等に描かれているため、全体の構造と細部が一度に理解でき、組み立て手順を視覚的にわかりやすく説明できます。

用途 3グラフィカルな図に

インフォグラフィックやデータ表現にも活用できるアイソメトリック。すべての要素が均等に描かれるため、情報を整理して立体的に伝えることができます。ただし、棒グラフなどのデータを立体的に描く際には、奥行きによる誤解が生じないよう注意が必要です。

解決策としては、正しい数値をはっきり表示し、グラフではなく数字がメインになるようにデザインする。または、具体的な数字との組み合わせを避け、「3年連続アップ!」や「ランキング1位は〇〇!」のような抽象的な文言とともに使用し、あくまでイラスト/方向性を示すための図説であるということが分かるようにしておくと安全です。

用途 4キャラクターの着せ替えに

着せ替えデザインでも活躍するのがこの手法です。視点が固定されているため、すべての着せ替えパーツが同じ角度で描かれ、パーツの組み合わせがスムーズに行えます。違和感なく新しいデザインを試せるため、デザインのバリエーションを広げることが可能です。

制作事例

可視化研究所カテゴリーイラスト

アイソメの活用例

当サイトのトップページでは、サービスカテゴリーに130°/25°のダイメトリック図法を使用しています。
各カテゴリーのイラスト化には、モチーフが明確でないサービスも含まれるため、「イラストにばかり目が奪われて何が言いたいのかよくわからない」という状態にならないよう注意しました。そのため、連作となるビジュアルに規則性のあるダイメトリックを採用し、また、文字が自然に注目されるように配置しています。

自社サイト「コジョみっけ」メインビジュアル

コジョみっけメインビジュアルでは、「近くの工場直売店を探しに行きたくなるメディア」を目指し、アイソメトリックで描かれた直売店の街をアニメーションで動かし、楽しげな雰囲気を全面に出しています。

対象サイト: 工場直売お散歩ずかん「コジョみっけ」

アイソメトリックは、チーム制作にも向いている

アイソメトチーム制作

アイソメトリック図法は、チーム制作にも適しています。複数の人が関わるプロジェクトでも、角度やトーンを統一することで、見た目の一貫性を保ちながら作業を進めることができます。たとえば、小学生にアイソメトリックのルールを教え、みんなで建物を描いてコラージュすることで、一つの街を作るプロジェクトも可能です。

もっと、アイソメ活用のアイデア

アイソメの展開

柄のように配置してみる

アイソメトリック図法を使って作成したオブジェクトを、柄のようにイラストを配置することで、リズム感と奥行きを感じさせるデザインを作ることができます。統一感のあるパターンを作りつつ、立体的な表現をすることで、デザインがより魅力的になります。特に、可愛らしい雰囲気や規則性が求められるブランディングにおすすめです。

ぐるりと3方向に配置

視点を変えて、上、右下、左下の3つの方向にイラストを配置する手法も効果的です。この配置により、空間に広がりを持たせた立体的なデザインが生まれます。まちづくりのプロジェクトや、絞られた3つの要素が繋がるビジュアルコンセプトに最適なアプローチです。


アイソメトリック図法は、見た目がすっきりしていて、いろいろな場面で使える便利な方法です。伝えたい情報もしっかりと届けられるので、ぜひ次のプロジェクトでアイソメトリック図法を試してみてください

参考

・いんてりあ図鑑 : 投影図法・透視図法 http://i-zukan.net/ic/pe_projection.htm
・アドウィンテクノ塾 : 機械製図の基礎 https://adwin-learning.com/MD/chapter1_4